公園の入り口にはわたしの原付が止めてある。そしてその横に、三浦さんが立っていた。


「おーい! 倉沢さん! 持ってきたよー」

「あ、ありがとう三浦さん! 早いね、先に来てると思わなかった」

「来るに決まってるよ、走ってきた! 倉沢さんの頼み事だもん、全力で来るって」


はい、と渡されたのは、三浦さんが最近スクーターと一緒に買ったヘルメット。

わたしはそれを、うしろできょとんとしているハナにかぶせる。


「おお、芳野先輩があたしのメットを……なんか感動」

「ごめんね、このメット明日返すから。お家に持って行く感じでいい?」

「うん、いつでもいいよ。気を付けてね」

「ありがと」


わたしは自分のメットをかぶって、原付に跨る。


「ハナ、後ろに乗って! 荷台、座れるでしょ」


ハナはまだ、なにがなんだかわからないみたいだ。

同じく何にも知らないはずの三浦さんに、されるがまま座らされている。


「そうだ、芳野先輩。これ、倉沢さんとおやつに食べてくださいね。うちのクッキーです」

「あ、ありがとう……あの、きみ俺のこと知ってるの?」

「知ってますよ、もちろん」

「えっと……ごめん。俺は、きみのことわかんなくって」

「いいんですよそんなの。わたしのことは忘れちゃってください。だってそうしたら、1回しかできない初めての出会いを、何回だってできるじゃないですか。それってすごく素敵ですよね」


キーを挿してペダルを踏む。

頼りないバイクのエンジン音がブオンと唸り声を上げた。