なんとなく気持ちは晴れないまま、家に帰って、お母さんの引っ越しの手伝いをした。
大方の荷物はもう整理してあるけれど、残りのこまごまとしたものを片付けたり、ついでにいらないものの処分もしたり。
家の中はだいぶすっきりしている。
家具などはほとんどそのままなのに、ほんの少し物がなくなるだけで随分様子が変わるものだ。
玄関前の廊下に積まれた荷物。
明日、お父さんが借りてくる軽トラックに乗せて、このお母さんの荷物が別の場所へ運ばれていく。
「こうしちゃうとなんだか寂しいね。初めて一人暮らししたときみたいなワクワクも実はあるんだけど」
「とても今から離婚する人の心境とは思えないね」
「ふふ、そうね」
お母さんとふたり、山積みの段ボールを感慨深く眺めていた。
今日は仕事のお父さんも、日曜の明日は引っ越しを全面的に手伝う予定だ。
「……明日かあ」
明日にはこの家からお母さんが居なくなると思うと、急に寂しくなった。
ガランとした、物の少ない家。
それは、決まってはいてもなんとなく現実味がなかった今までと違い、嫌でも家族が減ったことを思い知らされる。
今までとは違う生活。
知らない、新しい日々。
「……不安?」
お母さんがふいに訊ねた。
わたしは曖昧に、頷いてみせる。
「お母さんは、不安じゃないの? 寂しくはないの?」
「んー……確かに寂しいわね。これからは一人だから。たぶんアパートに越したら、余計それを感じると思う」
ぽこぽこと段ボール箱を叩いて、お母さんは少しだけ目を細めた。