「ねえハナ」
休日。
学校帰りには無理な午前中からハナと会っていた。特に今日はいつもよりも集まった時間が早かった。
今日は何をしようかな、なんてハナがのんびりと呟いているのを聞きながら、今しかないな、とわたしは考えた。
「なに、セイちゃん」
「今日、うちに来ない?」
ナチュラルに言ったつもりだったのに、ガチガチに緊張しすぎてなんだか変な声が出た。
初めてできた彼女を誘う男子中学生みたいだ。恥ずかしさで、変な汗が出る。
ハナは、明らかに挙動不審だったわたしが面白かったのか「ぷっ」と一度噴き出すと、睨みつけるわたしにごめんごめんと笑顔のままで謝りながら、
「いいよ」
と答えてくれた。
安心したせいで余計にまたおかしな汗を掻いたのは、もちろんハナには内緒のことだ。
「セイちゃん家は、どこだっけ?」
「南町。だからちょっと歩くけど、大丈夫?」
「歩くのは好きだしね。それにセイちゃんは、いつも通ってるんでしょ」
「うん。でも全然大変じゃないよ」
「じゃあ俺も大変じゃないよ。セイちゃんのおうちまでの道なんて、楽しみすぎてやばいくらい」
じゃあ、行こうか。とハナが手のひらを向ける。わたしはそれに手を重ねてぎゅっと握りしめた。
いつもは引かれていた手を、今日は時々引きながら、噴水のある公園の表の出入り口を抜けていく。
午前中の空は青い。