「今日も芳野先輩に会うんでしょ」


席を離れようとした三浦さんが、ふと思い出したように振り向いた。


「うん、会いに行くつもりだよ。クッキーもちゃんと今日一緒に食べるね」

「そっか、うん。でもうらやましいなあ。ふたりって、ほんと仲良しだよね」

「え、っと……」


うん、ていうのも気恥ずかしくて、そうじゃないなんて言いたくもなくて。

なんて答えればいいかわからずに固まっているわたしを、三浦さんは愉快そうに眺めている。


「あはは、しあわせそうでなにより」

「う、うん……ありがと」


三浦さんを見送ってから、ひとり机に顔を突っ伏す。

やばいな。顔、赤くなっていたかもしれない。

両手で隠した頬は熱い。





ハナとは変わらず、毎日会っている。

学校帰りにいつも、家とは違う方向のあの街へ行くことはそう簡単でもないけれど、苦に思ったことは一度だってなかった。


大抵ハナは私服で小さな丘にいたり、時々噴水の広場にいたり。

たまに見られる制服姿はレアで、そのときはいつもと違う商店街の方に出て、ほかの学生たちに混ざって制服デートを楽しんだりした。


ただ一度だけ。わたしの家に、ハナを呼んだ。

それはハナに、会って欲しい人がいたからだった。