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最近、時々夢を見る。
鮮やかな夜の中に立つ夢だ。
夜は暗いはずなのに、鮮やかなんておかしいなあって思って、そのうち、鮮やかな赤や黄色や緑や青は花びらの色だったんだと気付いた。
星の綺麗な暗い夜。わたしは、いくつもの花が咲く、お花畑の中に居た。
風が吹いて、花びらが舞う。
黒と白だけだった夜空が、色鮮やかに染められる。
ゆっくりと落ちていく花びらの向こう、目を凝らすと、きみが居た。
きみはいつもみたいな優しい笑顔で、わたしのことを見ていた。
わたしはきみの側に行きたくて、走ってきみのところへ向かう。
なのにどれだけ走っても、きみのもとへは行けなくて、どうしてかどんどん、きみは遠くに行ってしまう。
待って、と叫んでも、声はどこにも響かない。
きみはわたしに微笑んだまま、鮮やかな景色の向こうの夜に、まるで、溶けて、しまうみたいに。
背を向けて。
待って、ハナ
一度だけ振り返ったきみは、泣きそうな顔で笑っていた。
なんでそんな顔をするのかわからなくて。なんで遠くへ行っちゃうのかもわからなくて。
わたしはただ、きみの名前を呼んでいた。
呼ぶことしか、できなかった。