「あは、セイちゃん楽しそうだなあ」
ハナがくしゃりと笑ってみせる。
「わたしはどうでもいいんだよ。わたしはハナが楽しめる手段を今必死で考えてるの。わたしじゃなくてハナが楽しまなきゃ」
「セイちゃんが楽しいと俺も楽しいよ」
「ハナが楽しまなきゃわたしも楽しくない」
「あは、なるほど。じゃあセイちゃん頑張って俺を楽しませて。俺も憶えておくから」
ハナはショルダーバッグから、いつものノートを取り出した。
ノートは、わたしが初めて見たときよりもさらに後ろの方までページが埋まっていっている。
その、まだまっさらなページの先頭を開いて、ハナは今日の日付と一言を書き足した。
『セイちゃんの願望は、俺を星の綺麗なお花畑に連れて行くこと』
「なにそれ」
「セイちゃんが今言ったことでしょ」
「それたぶん数日後に見たら絶対意味わかんないって」
「セイちゃんが憶えててくれたら大丈夫だよ」
「そうだけどさあ」
そう言えばハナのノートは、わたしから見たら結構意味わかんないことばっかり書いていた気がする。
どうせならもっと詳しく書けばいいのに、「ちょっと意味不明なくらいが面白くていいんだ」って、前に言っていた。
なんのことだろうとか、なんで書いたんだろうとか、そういうことをまた見つけていくのが楽しいらしい。
「そういえばそのノートってさ」
「うん」
「他にどんなこと書いてあるの? わたし見ちゃダメ?」
実は結構気になっていた。
わたしの横で書き込んだりするときは覗いていたけれど、その部分以外は見たことがない。
見られたくないものもあるんだろうから、見せて、っていうのは言い辛かったんだけど。