「……星が、居なきゃいいなんて、思ったこと一度もない」


もう嗚咽混じりの声だ。

お母さんの涙はぼろぼろと止まらなくて、何度も何度も瞬きをしながら、しずくを零してわたしを見る。


「あたりまえでしょう。居る意味すら考えたことが無いくらい、どんなときだってわたしたちには、星が必要なの」


呼吸をするなら空気が要るみたいに。

魚が泳ぐなら水が要るみたいに。

晴れがあるなら雨があるみたいに。


「星が居るから、わたしたちが居るの」


あたりまえのように、必要とする。

不可欠な。絶対に。


そっか。これが家族なんだ。


「……うん」


お父さんとお母さんが居るからわたしが居る。

そしてわたしが居るからふたりが居る。


なんで、とか、どうして、とか。そういう理由は必要なかった。

ただ側に在ればよくて、それこそがすべてで。

最初っから、そういうふうに、世界はちゃんとできていて。



「……星」


呟いたのはお父さんだった。

お母さんにつられたらしい。必死で我慢していた涙がまた溢れそうになっている。


一度だけ、お父さんは目を瞑った。

そのせいでゆっくりと涙が流れた。

もう我慢はしていなかった。流れるままに、お父さんは泣いて、たった一言だけをわたしに言った。