きみにいつか、言われた言葉だ。
きみは憶えていないはずなのに、また、同じことをわたしに言う。
「俺はね、だから、きみに見える世界も本当は、とっても綺麗なんじゃないかって思っちゃうんだ。こんなこと、セイちゃんは他人事なんだからって怒るかもしれないけどね。でも、外からだからこそ見えるものもあるんだ」
起き上がって、そのままハナは立ち上がり、わたしを目の前から見下ろした。
「俺はきみを助けてあげられない。でもね、沈んでるきみを引っ張り上げることならできるよ」
伸ばされた手。
わたしのよりも大きな、まだカラの、きみの手のひら。
「引き上げた先の景色が、綺麗かどうかは俺にはわからないけれど、きみの居る世界だもん、きっと、どんな場所より綺麗に決まってるはずなんだ。ねえ、セイちゃん」
大きな声じゃない。とても優しい響き。
でも、限りなく。
強く心に届く響き。
「見ている世界を変えたいのなら、手を掴んで」
真っ暗闇だった。
光はどこにもなかった。
それがわたしの見ていた世界だ。
暗闇の底に沈んでいた。
そこへ、きみが現れた。
「 ハナ 」
とても温かかった。
これが、光なんだと思った。
まだまだ世界は暗いけど、そこに浮かぶ、たったひとつの白い穴。
そこを目指して浮かび上がる。
恐くはない。
だって、きみが居る。