ハナに、いろんなことを話した。


今日のことも、今までのことも。

わたしの家族のこと、わたしがずっと思っていたこと。


前に一度話したこともあったけど、憶えていないと思ったからもう一回話した。

そうしたらハナはノートを開いて「書いてあるから知ってるよ」と前のページを見せた。

『セイちゃん家族のことでいろいろ考えてる』となんやかんや書かれていたので「こんなのまで書かなくていい!」と怒ったけれど、本音はちょっと嬉しかった。



「そのまま、何にも考えずに飛び出してきちゃったんだけど……」


公園の丘の上は、今も変わらずとても静かだ。

遠くでは電車や車の音がするけど、この近くでは風とわたしたちの音しか聞こえない。


「心配してるだろうね、ご両親」

「……してる、のかな」


呆れているかもしれない。面倒なことをって怒ったり。

でもそれならまだいい。

もしかしたら、わたしが居なくなったことを良かったと思っているかも。


……お父さんとお母さんにとっては、わたしは、居ない方がいいみたいだから。


「セイちゃんが」


ハナが、閉じたノートの表紙を撫でながら言う。


「セイちゃんが、今俺に話してくれたこと。そういうことをずっと思ってたってこと、きっとご両親は知らないよね」

「……うん。隠してた、し」

「隠してたんならわかんないのも当然だよ。ご両親はセイちゃんがこれまでどんな思いでいたか気付いてないし、それと同じでセイちゃんも、きっと、お父さんとお母さんの気持ち、知らないはずだ」