「……答えられないでしょう」


ふわりと、ハナの顔が緩んだ。

星のない空の下、公園の街灯が柔らかな表情を浮かばせる。


「答えられないのが答えだって、自分でわかってる?」

「……わたし、は」

「消えたいとか、居なくなりたいとか、その気持ち嘘じゃないかもしれないけど。捨てたくはない大事なものも、セイちゃんにはきっと、たくさんあるんでしょう」



コロン、と、胸の中で何かが転がり落ちた気がした。


──そっか、これだったんだ。

この思い。


すごく苦しいのも、嫌なのも、どんどん目の前が淀んでいくのも。

はやくこの場所から逃げたいのに、どこにも行けないからじゃなかった。


本当は、ずっと、大切なときの形のままで、大切にし続けていきたかった。


わたしの世界。

好きな人が側に居て、他に、何も、なくていいから、ただ笑っていられる毎日を。

これからもこうして、繋げていきたかっただけだった。



「……ハナ……」

「ん?」

「わたし……ここに、居たいよ。みんなで、一緒に……!」

「うん」


ハナのおでこが、こつんとわたしのおでこに触れる。

距離の無い距離。

伝えられない心の声を、伝え合うための違う温度。



「居ていいんだよ、セイちゃん」



そう、ずっと。

それが、聞きたかったんだ。