てっぺんだけを残した日が、妙に眩しくて目に染みた。

少しだけ瞼を下ろして、ぼんやりと霞む視界の中で、あやふやな輪郭の光を見つめている。


「なんにも綺麗じゃないよ。世界は綺麗だなんて、誰が言ったか知らないけどさ、そんなの、それこそ、ただの綺麗事じゃんか。

憶えておきたいくらいのものが、こんな場所のどこにあるわけ? わたしには見えないよ。忘れてしまいたいものだらけ。

だっていつだって、どこでだって、こんな世界、汚れたものしかないんだから」


ああ、馬鹿みたいだな、と。

言いながら、自分で思った。

何してるんだろうわたし。こんな、出会ったばかりの知らない人に、とんでもなくくだらない思いを一方的に吐き出して。

視線を手元に落としてみれば、きっと何も掴めない心許ない手のひらが見える。

両の手のひら。

それをぎゅっと握りしめて、いつかのぬくもりを思い出す。


──カシャ

また、聞こえた。

耳元で。油断した。

横を向くと案の定、カメラを構えたハナがいる。


「……あのさ、さすがに怒るけど」

「いいよ。怒ったって、俺は俺の残したいものは意地でも残すって決めてるけど」


は? とわたしが言い返す前に、ハナはひらりと体を返して、わたしと正面で向き合った。