「あなた……星も小さな子どもじゃないんだから、そう心配することもないわよ」
溜め息混じりのそれは、わたしを庇ってと言うよりは、お父さんに張り合っての言葉みたいだ。
「そもそもお前がきちんと見ていないからこんな風になったんだろ」
「なに……それは、私の育て方がいけなかったって言いたいの?」
「それ以外にどう聞こえる。お前に任せたのが間違いだったんだ」
「何もしていないあなたに何を言う権利があるのよ! 都合の良いときだけ父親面しないで!」
──ドンッ、と今度はお母さんの手がテーブルを強く打った。
転がり落ちた食器の割れる音。それと一緒に、もっと別のものも壊れていた。
もう二度と戻らないほど、粉々に砕かれた、ガラス片みたいに。目には、見えないのに、でも、確かに。
「俺が働いているからお前は仕事もせずに家のことに専念できるんじゃないか!」
「そうやってあなたが仕事のことしか考えていないから嫌なのよ!」
「自分の仕事すらロクに出来ないで何言ってんだ!!」
「自分のことだけしか頭にないあなたよりマシよ!!」
テレビの中の映像を、見ているような気分だった。
景色はどこか遠くて、視界は、狭くて。
音は籠もったように聞こえて、透明な薄い壁で、隔たれているみたいに。
でも、それは、現実。
目の前にいるのは、わたしのお父さんとお母さん。
わたしの……。
「家のことも子どものことも全部私任せ! 調子いいときだけ口を出さないで!」
「俺だって文句を言いたいわけじゃない! お前がしっかりやらないせいだろ!」
「だったらあなたが全部やってよ! もう私ひとりにやらせないで! 私だって自分の時間が欲しいの!!」
「俺は外で働いてるんだぞ! お前よりずっと忙しいんだ! お前がやれ!!」