公園の前に差し掛かったところで、ふと、足を止めた。

まだ、ハナはいるのかな。

そう考えて、でも、公園には入らずにもう一度歩き出す。

わたしがここを出るとき一緒に帰ったんだから、いるわけがないんだ。

ハナはちゃんと家に帰ってる。だから、わたしも帰ろう。



右手には、お店で買ったケーキが3つ。

お父さんとお母さん、ふたりともが大好きなチーズケーキ。


特別な日にはよく食べていた。わたしの誕生日にはイチゴのショートケーキで、お父さんとお母さんの誕生日には、ふわりと焼いたチーズケーキ。

今年は一度も食べていない。

わたしの誕生日も、お父さんの誕生日も過ぎたけれど、テーブルにケーキは乗らなかった。


小さい頃はいつも、ごはんは3人一緒だった。

お父さんはなるべく早く仕事から帰って来てくれたし、遅いときはお母さんとふたりでお父さんの帰りを待った。

四角いテーブルにコの字型になって座る。

目の前にお父さん、斜め横にお母さん。

いつの間にか決まっていた家族の定位置。自分たちの場所。


いつからそこが定位置じゃなくなったのかわからない。

家族が集まらなかった場所。


でも、今日はもう一度集まってみよう。

四角いテーブルを囲って座って、お土産買って来たって驚かせよう。

喜んでくれるかな。たぶん、喜んでくれる。


ケーキを食べて、ちょっと幸せな気分になったら訊くんだ。

アルバムの場所。いつかの写真。

そうしてハナに見せてあげる。


わたしの中にも確かにあった、ハナの見る世界みたいな、何よりも綺麗な思い出。