「三浦さん、これ、3つちょうだい」
「はい、チーズケーキね。オッケー、ちょうど残り3個だ。これ、うちの人気商品ね」
「そうなんだ。食べるの楽しみだなあ」
「うん、ご期待には添えると思うよ」
三浦さんは慣れた手つきでケーキを箱へと大事にしまう。
わたしの家が少し距離があることを知っているから、ドライアイスも一緒に付けて。
「はい。帰る途中で転ばないようにね」
「たぶん大丈夫。ありがとう」
ケーキと同じでしまう箱もお洒落でかわいかった。まるで宝箱みたいだ。箱の底は、ひんやりと冷たい。
「3個ってことは、家族の分?」
「うん、そう。チーズケーキね、お父さんとお母さんの大好物なんだ」
「なるほど。倉沢さんのパパとママ」
三浦さんが嬉しそうに、満面の笑みをわたしに向ける。
「うちのケーキはみんなを幸せにするケーキだよ。家族みんなで、仲良く食べてね」
こくん、と縦に頷いて答えた。三浦さんは満足そうに、大きな目を線みたいに細めていた。
気付いたらすっかり外は真っ暗だった。
まだ薄暗い程度だったはずが、おしゃべりしていたら思ったよりも長居してしまっていたらしい。
他のお客さんが来たのを機に、わたしはお店を出た。
星の少ない夜道を、家に向かって歩いて行く。



