写真の整理を再開したハナは、わたしが拾い集めた束をもう一度全部見返していた。
ハナなりに挟む順番とかにこだわりでもあるんだろうか。
わたしはじっと黙って、それを横から眺めている。
ふと、ハナの手が止まった。
束の中から抜き取られた1枚の写真。
「あ、それね、わたしが撮ったんだよ」
「セイちゃんが?」
「うん。よかった、結構うまく撮れてるね」
それはハナがひとりで写っている写真だ。
空と、遠くの街並みを背景に、風の中で笑っているハナ。
「……そう言えば自分の写真、このアルバムには1枚もなかったな」
「そうなの? もったいないよ。わたしがいっぱい撮ってあげようか」
「いいよ、恥ずかしいから」
「わたしそのセリフ何回きみに言ったと思ってるの」
そして何回無視されたと思ってるんだ。
ハナは答えず笑ったまま。
そうしてそっと、日にかざすみたいに自分の写真を持ち上げた。
「……これ、どこかな」
ぽつり、と聞こえた声に、一瞬なんのことだろうと思った。
だけどそれは本当に一瞬。
ああ、と、心の中だけで呟く。
──ああ。ハナはもう忘れてしまったんだ。
そこはふたりで決めた、狭くて小さな秘密の場所。



