「なんだ……残念、セイちゃんには効かないか」


ひとしきり笑って落ち着いたわたしの横で、ハナは悔しそうに呟いた。


「コロのかわいさを伝えられただけ良しとしよう」

「まあ、それはすごく伝わった」


そうしてハナは、アルバムを膝の上に戻す。


「あ、でもね、セイちゃん」

「うん?」


向き直ったハナが、わたしを覗くように少しだけ首を傾げた。


「セイちゃんも、すごくかわいいからね」



たぶん、何の策略も意味もない、何気ない一言なんだろう。

きみがわたしにヤキモチを焼かせようと思って言ったことよりも、そんなことのほうがわたしを真っ赤にさせるって、きみはわかっているんだろうか。

絶対、わかってないと思うけど。


「……そういうのは、言わなくていい!!」

「痛っ! なにすんのセイちゃん」

「ハナのバカ!」

「ええ?」


困惑するハナにグーパンチ。

ハナはますます困った顔で、殴られたところをさすっている。


「なんでセイちゃんここで怒るの?」

「うるさい、あほ」

「よくわかんないなあ」

「女心とはそういうものだ」

「なるほどなあ」


勉強になりました、とハナはくつくつ笑う。

本当にわかってるんだろうか。いつもいつも無意識にこんなことを言われては、わたしの心臓がもたないんだけれど。

死活問題だ。本当に、どうしようもなく。

もうちょっときみには、きみの一挙一動が案外わたしに影響を与えているということを、ちゃんとわかってほしいよ。

わかられたらわかられたで、色々困るんだけど。

と、溜め息だけ、こっそり吐いてみる。