「あ、あった。ホラ、セイちゃん見て」
やだ。見たくない。
と思いながらも見てしまうのは人のサガってやつだ。
止まる前兆みたいにバクバク響く胸の鼓動に、合わせて大きく息を吸う。
「…………」
「ね、かわいいでしょう。ほんっとにかわいい。すっごいかわいい」
「……かわいい、けど」
「昨日もね、一緒に寝たんだよ。俺の側から離れないの」
「うん……かわいいね」
「でしょ。うちのコロは超美人さんなんだから」
これ見よがしに開かれて、目の前に突き付けられたアルバムの写真。
そこに写っているのは、くりっとした目が愛らしい、綺麗な茶色の毛の、女の子。
ハナの家の豆柴、コロちゃん。
「かわいいだけじゃなくて賢いんだよ。朝散歩に行ったんだけどね、横断歩道で赤信号だったらちゃんと止まるんだ。偉いよね、しっかりしてるよね」
「うん……そりゃ、すごい」
「ねー本当に。もうかわいくて仕方ないんだよ」
デレデレな様子で、ハナはコロちゃんが写っているところをひとつひとつ見せていく。
どアップだったり寝顔だったり、ぷりっとしたお尻だったり。
どれもこれもハナの言うとおり、文句なしにすごくかわいい、けど。
「……っぶ!」
「え……え、なに?」
「あはは!! ハナ、ちょっと待ってよ。そんなんじゃあわたしヤキモチ焼かないって」
「えーうそ、こんなにかわいいのに?」
「かわいいのは本当だけど。なんだろ、かわいすぎて対抗できないからかなあ」
むしろコロちゃんにデレデレなハナのほうがかわいい気もするけど。



