「……別に、ハナを嗤ってるわけじゃないよ」

「ふうん」

「あ、信じてないでしょ。違うからね。そりゃあ、かわいいなあと思ったけど」

「ほら、俺を馬鹿にしてる」

「してないってば。それにわたしお兄さんとね、ずっとハナの話ばっかりしてたしね」

「それはそれで……恥ずかしいんだけど」

「わたしはただね、嬉しいだけだよ」

「嬉しい?」

「うん。ハナにヤキモチ焼かせられた、バンザーイ! って感じで」

「……なにそれ」


ふっとハナが笑う。

困ったような呆れたような、でも心底やわらかい表情に、また心臓がざわざわする。

さっきまでとは違う痛み。もっとぎゅっと締め付ける感じ。


あんなに抱きしめたかったのに、ずっと見つめてたのに、途端に近づけなくる、目を逸らしそうになる。

──本当は近づきたいのに、いつまでも見ていたいのに。



「わかったよ。俺はセイちゃんにまんまとヤキモチ焼かせられました、ザンネン。仕返しに俺も、セイちゃんにヤキモチ焼いてもらいます」

「え?」

「さっき挟んだ写真にあったんだよねー」


どれだったかなあ、と呟きながらハナはアルバムをめくっていく。

でも、えっと、ちょっと待て。

仕返しにヤキモチって……まさか、女の子と写ってる写真、とか?

いや、女の子、だったらまだいいんだけど、ただの女の子じゃなくて……彼女とか、だったら。

……そういえば勝手に彼女なんていないと思い込んでたけど(いつもひとりでふらふらしてるし、暇そうだし)有名私立の学生なうえ見た目だって良いんだから、いくら記憶のことがあるとは言っても、女の子は放っておかないんじゃ……。


「すごくかわいいんだよ」


もし、そんな、もの、見せられたら。

わたし、ヤキモチどころじゃ、済まないけれど。