「よし。一眠りしたし、セイちゃんも来たことだし、続きやろっかな」
こんこんと、膝の上で写真の束を綺麗に揃えてから、ハナは隣に置いていたらしいいつものアルバムを手に取った。
「写真、アルバムに挟んでたの?」
「そ。セイちゃんが来るまで暇だったから整理してた。いつの間にか途中で寝ちゃってたみたいだけど」
「……大事なもの片付けてるときに、寝ちゃダメじゃん」
「あは、そうだね。ごめんね、考え事もいろいろしてたから」
ふうん、と呟きながら見ていた横顔が、一瞬だけ表情を変えた気がした。
でもそれは本当に一瞬で、まばたきをしたあとにはもう、いつものハナの顔に戻っていた。
ハナは、アルバムの一番新しいページを開いて、そこに写真を挟んでいく。
最初に選んだ写真は、たぶん今のハナは知らない、あの秘密の場所から撮った景色だ。
「そういえば、今日はセイちゃん遅かったね。俺予定があったから、今日は負けると思ってたんだけど」
「うん。ハナ、病院行ってたんでしょ」
「あれ、知ってたんだ。俺言ったっけ?」
「ううん。ハナのお兄さんに聞いた。さっきまでわたし、お兄さんとデートしてたんだよ」
ハナの目が丸くなる。
それはあんまり見たことのない、本気で驚いているときの表情。
「うそ……兄貴と……セイちゃんがデート!?」
「うん、ほんと。駅前のカフェでお茶してきた」
「なにそれ! ずるいだろ、兄貴のやつ……」
フイ、と顔を逸らすハナに、おや、と思った。
『俺がセイちゃんと一緒に行っちゃったら、あいつがヤキモチ焼いちゃうしね』
そんなことあるわけないと、お兄さんには言ったけど。
「……ハナ、もしかしてヤキモチ焼いてる?」
もしかして、もしかすると。
変な期待、しちゃってもいいなら。



