「ハナ、写真飛んでたよ」

「え、うそっ」

「ほんと。全部、紙ふぶきみたいに空飛んでた」


ハナは、そこでやっと目が覚めたみたいだった。

慌てて立ち上がろうとするのを、隣に座ることで止める。


「大丈夫。もう拾った」


集めた写真はわたしが知っている景色もあれば、まったく知らないものもあった。

知っている景色だし、わたしが映ってもいるのに、いつ撮ったのかわからないものさえ。


「たぶん、全部あると思うんだけど」

「うん、ありがと。よかったよーさすがセイちゃん」

「……どういたしまして」


大事なものなら大事にしろ。

って怒りたくなるんだけど、ハナの顔を見ていたらそんな気分もそがれてしまう。

まあいっか、なんて思っちゃうあたり、甘いなあって今度は自分に怒りたくなる。


ハナは、1枚1枚を、ついた砂埃を払いながら丁寧に確認していた。

ハナの撮った写真。

それはすべて、思い出を写したものであり、そのままの、ハナの記憶だ。


今はもう、きっとハナの頭の中から消えてしまった過去のひとつひとつ。

まるで思い出を頭から取り出して、代わりに紙に焼き付けているみたいだ。

だから。

飛んでいく写真を見て、驚いた。それでいて、怖かった。


なんだか、ハナの記憶が、そうしてハナから離れてどこか遠くへ消えてしまうんじゃないかと思って。

ハナには、本当に、なにひとつ、残らないんじゃないかと思って。