風が止んだ途端、それは不規則に右へ左へ舞いながら地面へと落ちていく。
一枚を掴まえて、それが写真であったことに気付き、なおかつ見覚えのある風景でもあったことに気付いて慌てた。
とりあえず、近くに落ちているものを手当たり次第かき集めながら、
「ハナ!!」
丘の上で寝ているだろう人を大声で呼ぶ。
あまり広い範囲に飛ばなかったのは運がよかった。
何枚あったのか知らないけれど、とにかく目に見える範囲のものを全部拾って、丘の上に登っていく。
「ん……んー……」
ハナは、ようやく目を覚ましたところだった。
子どもみたいな動作で目をこしこし擦りながら、むくりと芝のついた体を起き上がらせる。
目の前で仁王立ちをするわたしを見ても、驚いた様子は見られなかった。
まだ頭が起ききっていないのか、眠気まなこで見上げていた。
「あ……セイちゃん、こんにちは」
「はい……こんにちは」
慌てて駆けまわったせいで息が切れる。涼しい顔であくびをしているこいつとは大違いだ。
よほど、腕に抱える集めた写真を頭上にばらまいてやろうかと思った。
だけどそれを思っただけで留めたのは、もちろん、また拾うのが自分の仕事な気がしたからだ。
溜め息だけ、わざとらしく大きく吐く。



