カシン、と小さな音を立てて、お兄さんのフォークがお皿に乗った。

ミルフィーユはまだ、半分くらい残っている。


「きみとならあいつは、ひとりにならないで済むのかな」

「え?」


つい、顔を上げてしまった。

恥ずかしさのあまり勢いで食べていたミルフィーユの、最後の一口を飲み込んだところだった。

お兄さんはやっぱり、わたしをじっと見つめていて。


「セイちゃん、もしもきみがよければ……きみの気の済むまででいいから、ハナの側に居てやって」


くしゃりと、笑う。

笑いながらも、どうしてか、今にも泣きそうにも見える顔。

でも、決して泣かない顔。


「…………」


少し、違和感があった。違和感、というか、疑問、というか。

ハナにはわたしが必要なんだって、お兄さんは言っているみたいに感じる。

わたしが居なければハナはひとりきりなんだって。

でもそんなことはない。逆なんだ。

きっとわたしたちが一緒に居るのは、わたしがハナを必要としているから。

すごく身勝手なことかもしれないけれど、わたしが自分のために、ハナと居たくて、ハナと居る。

だからハナがわたしの側に居てくれている。わたしがひとりにならないようにと。

ただそれだけ。ハナはわたしが居なくても、いつもの、あの、ハナで居られる。


それにハナはいつだって、孤独ではないはずなんだ。

だって、ハナには。