それからさっきわたしがしていたみたいに片手を空に向けて、伸ばした人差し指で宙をなぞっていく。

何を描いているのかわからなかったけれど、星を、繋げているみたいだった。


「父さんは真面目だけどちょっとドジ。母さんはのんびり屋でマイペース。ふたりとも、たぶん、俺のことでいろいろ迷惑かけちゃってると思うんだけど、俺にはそれがわかんないくらい、昔と同じで明るくて、優しい人」


わたしの知らない、ハナの家族の話だった。初めて聞く、お父さんとお母さんの話。

これから会えることがあるんだろうか、それともそれは叶わないのか。

どっちにしろ、今知れたことと言えば、たぶん、ふたりともハナによく似ているということ。


そうしてきっと、ハナはとても愛されて。

だからこそハナは、今わたしの隣に居る、きみであるということ。


知らなかったきみのこと。


「そんで兄貴は……兄貴も、すごく優しい。小さい頃からずっと、いつも俺の前には兄貴が居て、でも背中を向けてるんじゃなくて、振り向いて、手を引っ張りながら前を歩いてくれてた」

「かっこいいね、お兄さん。優しいのは、ハナと雰囲気似てたから、なんとなくわかるけど」

「セイちゃんは、もう兄貴と会ってたんだっけ?」

「うん、一度ね、少しだけだけど会ったことあるよ。ここでね」

「そっか。兄貴はね、俺の自慢で、憧れなんだ」


ずっとね、と、ハナは言った。

本心なんだと、顔を見ればわかった。


「大好きなんだね、お兄さんのこと」

「ん……もうこんな歳になって、こういうこというの、気持ち悪いかもしれないけど」

「そんなことない。羨ましいし、素敵だと思うよ」


わたしには無いものだからこそ余計に。

ただひとつの家族との絆。

心から、大切な人たちがいて、恥ずかしげもなく、人に語れること。

簡単なようでいて、簡単には、できることじゃないと思うんだ。