返事はしなかった。

元々約束はしないわたしたちだけど、そうじゃなくても、「見せてあげる」とは言えなかった。



「ハナは」


話を変えたくて出した声は、わざとらしく大きかった。

内心焦るくらい恥ずかしかったけど、ハナはそれを知ってか知らずか、柔らかな表情のままだった。


「なに、セイちゃん」

「ハナの家族は、どんな?」

「ん、俺の家族?」

「うん。仲良し?」


ハナは少し間を置いた。

言い渋ったわけでも、答えに悩んだわけでもないと思う。

わたしの幼稚な問い掛けを、だけど大切に解いていくような、そんな間だった。


「仲良しだよ。すごくね」


はっきりと、素直にハナは答えてくれた。

そこにはわたしへの気遣いはなかった。

気を遣わない答えが、一番わたしが欲しいものだってことをわかっていたんだろうか。


ハナが、とすんと音を立てて、わたしの隣に同じように寝そべる。


「うちは両親と兄貴と俺の4人家族。あと、豆柴のコロもいる。女の子。セイちゃん家は生き物飼ってる?」

「小学生の頃ハムスターを飼ってたけど、それが死んじゃってからは飼ってないよ」

「そっか。うちのコロはね、ちょうど俺が小学校を卒業するときにご近所さんから貰って来たんだ。今度セイちゃんに紹介しようかな。犬平気?」

「うん、好き」


答えると、ハナは嬉しそうにふわりと笑った。