止まったはずの涙が、また流れ出す。


瑠衣は何も言わず隣に座り、着ていたジャケットを脱いでわたしに掛けてくれた。


温かかった。

彼の匂いがした。

海から吹く風で襟元が揺れて、わたしの頬をかさかさと撫でる。


「急に電話してごめんね」


波にかき消されそうなほど、かすれた小さな声で言った。


だけど瑠衣はわたしの声をちゃんと拾ってくれて、ううん、と首を振った。


「先生が辛いときは、俺がそばにおりたいねん」


瑠衣の手が横から伸びてきて、涙を拭う。

掛けられたジャケットよりも、ずっと熱い指。


「何があったん?」


話したくなければ話さなくてもいいけど、という言い方を瑠衣はしなかった。

そんな風に言えばきっとわたしは何も話せないだろう。

それを彼はわかっていたんだと思う。