「うわっ」


わたしたちは同時に叫び、走り出した。


瑠衣は自分のバッグを傘代わりにし、わたしを雨から守ろうとしてくれる。


浜辺に建つ小さなコンクリート製の小屋に避難した。


彼の心遣いもむなしく、頭から足元までびしょびしょだ。

肩で息をすると、口の中に水滴が入った。


「俺らってよく雨に降られるなあ」

あきれ笑いの顔で瑠衣が言った。

たしかに、前にファミレスで話したときも、帰り道に雨が降ったんだ。


「片瀬くんが雨男なんちゃう?」

「先生の方やろ?」

「わたしは晴れ女ですよー」

「俺だって」


くだらないやり取りをしながら、建物の中を見渡した。


数台のテーブルが隅に置かれ、電気もなく薄暗い。

“カキ氷”と書いた紙が壁に貼られている。


どうやらオフシーズンで使われていない海の家らしい。