たっぷりと水分をふくんでいそうな灰色の雲は、何も降らさずにただ上空に広がっている。


もしも雨なら行かないと決めていた。

だけど土曜日、空はわずかに暗くなるだけで、とうとう雨が降ることはなかった。


昼過ぎに、わたしは家を出た。


電車に乗り、文庫本を広げ、ちっとも頭に入ってこない文字の列を追う。


2駅で電車を降り、スターバックスに入った。

店内を見回してみても知った顔はまだ見当たらず、わたしは適当に席に座った。


――『じゃあ、週末は俺と遊ぼっか』


あんな誘いを真に受けてわざわざ休日に出てくる自分は、バカかもしれない。


いや、断るチャンスが、ほとんどなかったんだ。

予備校では瑠衣の周りにはいつも友人がいる。

かといって電話をかけるのも、抵抗がある。


で、結局わたしは、こうして土曜日のスタバで座っている。