「ううん。楽しいよ」

「でも今日だってどうせ、栗島がむりやり誘ったんですよね?」


さすが、鋭い。

わたしの困った笑顔を見て涼子ちゃんは


「やっぱりそうか……。ホンマすみません」


とうなだれた。


その様子は友達というよりも、まるでふたりの母親みたい。

おもしろい子だ。


わたしはさっき瑠衣が空けてくれた席に、腰を下ろした。


「水野先生は彼氏とかいるんですか?」


何の脈絡もなく、涼子ちゃんはそんな質問をしてくる。


「ううん、今はおらんよ」

「モテそうやのに」

「全然。涼子ちゃんこそ彼氏は?」

「わたしも今はいないです」


会話はそこで終わった。

トレーを持った瑠衣と栗島くんが戻ってきたからだ。


「はい。お待たせ」

「……ありがとう」


わたしの前にコーヒーを置き、瑠衣はとなりの椅子に座った。


ファーストフード店の狭い席では、今にも肩が触れそうだった。