……ねえ、瑠衣。
 

あの頃、瑠衣はよく言ってたよね。

虹を見るためには雨が必要なんだって。
 

だからわたしたちが今流している涙も、きっとそうなんだ。
 


虹は出る。
 

きっと、虹は出るんだよ。




――『辛いことがあった分、きっと願い事も叶うんやと思う』
 


ねえ、だったら今、この雨にお願い事をしてもいいかな。
 

どうしても叶えてほしいこと。

欲張って、いっぱい言ってしまうけれど。




お願いします。

どうか――…
 
 

どうか瑠衣のこれからの人生が、喜びで溢れていますように。
 

どうか瑠衣の苦しみが、少しでも早く晴れますように。


瑠衣がアメリカに行っても、健康でいられますように。
 

瑠衣のすばらしい友たちが、これからも彼を応援してくれますように。
 

わたしなんかよりずっと素敵な女性が、瑠衣の前に現れますように。
 

その女性のお腹にいつか、可愛らしい命が宿りますように。
 


わたしの一生分を使っても足りないくらい、ありったけの幸せが、瑠衣のもとに降り注ぎますように――。

 



……ねえ。

どうして。
 


今になって願うのは

こんなにも
あなたのことばかり――。





「心から……愛してたよ」


その言葉をやっと言えたとき、

夜は明けていた。