同窓会の会場は、渋めのお座敷がある居酒屋だった。
 

集まった、なつかしい顔ぶれ。
結婚している者もいれば、自分で事業を始めた者もいた。


それぞれの近況を報告し合い、乾杯もしないうちに場は盛り上がっていた。


「卓巳〜! 元気やった?」


みんな卓巳の顔を見つけると、待ってましたという感じで嬉しそうに近づいている。

卒業して数年がたっても、やっぱり卓巳は人気者だ。
 

にぎやかな雰囲気が、よどんでいたわたしの気持ちを少しだけ晴らしていった。


せっかくだから今日はいろんなことを忘れて楽しもう。


「久しぶりやね〜、葵」


声をかけてきたのは、3年のクラスで仲の良かった直子だ。


「ああーっ、久しぶり!」

「葵、変わってないなあ」

「相変わらずチビって言いたいんやろ?」

「正解〜」


わたしたちは学生に戻ったようにキャイキャイとはしゃぎながら、並んで席に腰をおろした。


その向かい側にさりげなく卓巳が座ると、直子はわたしに耳打ちした。


「卓巳と近くの席で、気まずくない?」


7年も前のことなのに、わたしと卓巳が付き合っていたことを周りははっきり覚えてる。


「うん、大丈夫」


ていうか卓巳はもう一児のパパなんだけど。

と言いかけて、妙に言い訳くさいことに気づき、やめておいた。




お酒が入ると、しだいに話は突っ込んだものになっていった。


「葵は彼氏とかいてへんのぉ?」


酔っ払った直子が語尾を伸ばしながらたずねてくる。

「いるよ」

「卓巳だったりして〜!」