「いや、だって不思議に思うやんか。
彼氏作ろうと思えばいくらでも作れるはずやのに、よりによって妻子もちの俺なんかと寝てるし」


「自分で言うな、自分で」


クスクスと笑いながら、わたしは灰皿にタバコを押し付けた。


「作る気、ないよ。彼氏とか面倒くさいし」

「それで寂しくないん?」

「いつか離れるくらいなら、最初からひとりの方がよっぽど寂しくない」

「でも、離れるかどうかなんてわからへんやん。
……なんか、君見てると深い理由でもあるように思えるわ」


また笑いがこみあげた。

風邪ひきの娘がいながらよその女を抱いた人に、そんな言葉を言われたことがおかしかった。


「もうええやん。それより早く帰ってあげなよ」

「あ、うん」


あわてて洗面所に行き髪を整える山崎を、横目で見ながらため息をつく。


ばいばい。
あんたとの関係はもうおしまい。


この人に抱かれたのは、全部で8回。

わたしにしては長く続いた方だった。