清水さんにそんなことを言うのは本当に怖いはずなのに、美空はあたしのことを庇ってくれた。


「助けてもらった人に、そんなひどいことできません……！ごめんなさい……！」


初めて清水さんに逆らった恐怖からか、美空の目に涙が滲む。
それでも、必死にあたしを守ろうとしてくれていた。


「生意気言ってんじゃないわよ！」


案の定、清水さんは顔を真っ赤にして、怒りに満ち溢れた形相で右手を振り上げる。


あたしは隠れていたことも忘れて、とっさに飛び出して、美空の前に立ちはだかった。


パシンという音と共に、あたしの左頬に痛みが走った。


「……っ！」


驚いた顔の清水さんと目が合う。


じんじんとする頬を手で押さえて、あたしは清水さんをキッと睨む。



「これ以上美空にひどいことするのは許さないから」



何も考えずに、そんな言葉が自然と口を突いて出ていた。


「あんたたち……私に逆らったらどんな目に遭うか覚悟しておきなさいよ……」


清水さんは、今までで一番低い怖い声でそう言い残し、取り巻きたちを連れて去って行った。


こ、怖かった……！


今までそれなりに言い返すことはあったけど、あんなに怒った清水さんを見たのは初めてかもしれない。


清水さんの言った通り、これからどんないじめに遭うか、それなりに覚悟をしておいたほうが身のためかもしれない。