――バシャッ!



「ひゃっ……!」


美空が小さな悲鳴を上げる。


あたしは、清水さんが缶コーヒーを開けたあと、中身を美空の頭からかけたのを見逃さなかった。


「カフェオレが飲みたいから買ってきてって頼んだのにさ、コーヒー買ってくる意味がわかんないんだけど。自販機になかったんなら、さっさとカフェオレが売ってる自販機探しに行ってこいよ」


美空の髪の先からコーヒーが滴り落ち、制服には茶色い染みが広がっていく。


そんな彼女に、清水さんはとてつもなく冷たい声で「やり直し」と言い放った。


何……あれ……。


「あーあ。川原蒼唯がいなくなったから仕方なしにあんたに構ってあげてんのに、おつかいも出来ないなんてどういうことなのかしら」


わざとらしく大きなため息をつく清水さん。
それに対して、取り巻きの内の1人がクスクスと笑いながら言う。


「でも今日、川原1ヶ月ぶりに登校してきたよね。美空はつまんないし、またあいつにいたずらしてやろうよ」


その言葉に、美空は俯いていた顔をバッと上げ、清水さんはニヤリと笑った。


「そーだねぇ。じゃあ、また美空ちゃんに協力してもらっかなー」