「……よしっと」


鏡の前で、あたしは制服のリボンをきゅっと結ぶ。それと同時に、自分の気持ちも今一度引き締めた。


久しぶりに着た制服は、お母さんがクリーニングに出してくれていたおかげで新品同様に綺麗になっていた。
あの日、雑巾でしぼったあとの水をかぶったとは思えないぐらい。


そんなわけで、とうとう中間テスト当日。
不登校だったあたしが学校に戻る日でもあります。


緊張しないわけがない。
あまり朝に得意じゃないあたしが早起きしちゃうし、せっかくお母さんが作ってくれた朝ごはんも喉を通らなかった。


「すーはー」


大きく深呼吸をしてからバッグを肩にかけると、あたしは玄関でローファーを履く。


「蒼唯」


すると、リビングからお母さんがわざわざ見送りに来てくれた。


「お母さん」


ああ、ダメだ、どうしよう。
急に心細くなってきて、「やっぱり行きたくない」とお母さんに甘えてしまいそうになる。


「気をつけてね」


「うん……」


視界が歪んできてしまった。


怖い。でも、泣いて立ち止まるだけでは、何も変わらない。


お母さんは、そんなあたしの気持ちを察してか、優しく微笑んで手を振った。



「いってらっしゃい。あおちゃん」



お母さん……!


目もとにたまった涙をぐいっと拭い、頬を両手でぱしっと叩く。



「いってきます!」



あたしも笑顔で家を出た。