リビングに降りて、あたしは先生に宣言した。



「澤田先生!あたし、行きます!テスト、学校で受けます!」



テーブルに両手をついて、目を丸くする先生に詰め寄る。


さっきまで不安そうにしていたあたしはどこへ行ったのやら。
とでも言いたげな様子だ。


「わ、わかったけど……どうしたの?急に」


澤田先生に不思議そうに聞かれ、あたしは碧のことを思い出して少し顔が熱くなる。



「……恩人に背中を押してもらったんです」



驚くほどナイスなタイミングで碧の言葉がよみがえった。まるで、全部見ていた碧があたしの為に声をかけてくれたみたいな。


それほど、碧の優しい言葉はあたしの中に残っている。


「行きます。ちょっとまだ怖いけど……」


「大丈夫よ。先生も出来る限りフォローするわ」


先生……。


ここ1ヶ月ほど、あたしの為にわざわざ毎日家まで来てくれる先生を見てきた。
だから、その言葉に嘘はないってわかる。澤田先生は、とても生徒思いで熱意溢れる人だから。


でも、あたしが学校へ行かなくなった理由は、まだ知らない。


それでも無理に聞くことはせず、こうしてあたしを気にかけてくれるようなことを言ってくれるんだ。