確かに、不登校になったとはいえ、ただ碧と遊んでいただけではなく、自分で出来る範囲でそれなりに勉強はしていた。


もともと頑張れば人並みに勉強はできるタイプだったからどうにかなるかなと思ったけど、習ったところを復習するのと習ってないところを勉強していくのとでは訳が違う。
教科書だけで高校の勉強を理解しようとするのはなかなかの難しさだった。


「……ありがとう、ございます」


大人しくプリントを受け取ると、澤田先生はホッとしたように「はぁ〜よかった〜」と息をつく。


「安心したわ。それを受け取って勉強しようとするってことは、少なからず学校に戻りたいという意識はあるってことだよね」


そう言って、少し嬉しそうに微笑む先生。


だけど、あたしがその言葉を素直に肯定することはなかった。


「違いますよ。学校に戻りたいなんてこれっぽっちも考えてない。ただ、この先の自分の将来の為に一応やっておこうと思っただけ」


誰があんなクソみたいな連中しかいない空間に戻りたいと思うもんか。


このノートのコピーだって、たぶん澤田先生がクラスの誰かに無理にお願いして、コピーしてきたものだろう。


だって、あのクラスに、あたしに戻ってきて欲しいなんて思う人間はひとりもいないんだから。


美空も、誰も……。