「はい、川原さん。これあげる」
どさっと目の前にプリントの束を置かれ、あたしは思いきり顔をしかめた。
「……何これ?」
「川原さんが学校に来なくなった日から今日までの授業のノートのコピー」
そう言ってにっこりと笑うのは、あたしの担任である澤田先生。
あたしが学校へ行かなくなってから3週間に突入。
今日もあたしの家までやってきた澤田先生は、いつものように話をしに来たのかと思えば、突然あたしにこのプリントの山を差し出してきたのだ。
「ちょっ、何なのよこれ。いらないんだけど」
「いらないわけないでしょー」
差し出されたプリントを突き返そうとするけど、澤田先生はにこにことしたままそれを拒否。
「川原さんはもともとできるほうではあるけど、自分の力で習ったことのないものを勉強するのは大変でしょう?かといって、ずっとこのままというわけにはいかないと思うの。だから、良かったら使って。参考書代わりにでも」
「何もないよりはマシでしょ」と澤田先生が、相変わらず笑顔を崩さず言う。