さて、今日は机になんて書かれているのかな、なんてぼんやりと思いながら自分の席へ歩き出すと、あたしをいじめているグループの1人に足を引っ掛けられて転んでしまった。


「痛っ!」


突然のことにバランスを取れなかったあたしは、机と机の狭いところに転び、さらにその拍子で額を机の角にぶつけてしまった。


そんな姿がおかしかったのか、くすくすと聞こえてくる笑い声。奴らに至っては、爆笑している。


はぁ……呆れて物も言えない。
本当にこの人達は高校生なんだろうか。
こんなことをして何が楽しいかまったくもってわからない。というか、やり方が子供過ぎてこっちまで笑えてくる。


今日も必死にネタを仕込んできたんですね、ご苦労様。


心の中で、そう皮肉たっぷりに悪態をついた。


それから、“いい子ちゃんぶってんじゃねーよブスが”と書かれた自分の机をふくこともせずに、何事もなかったかのように椅子に座った。


“いい子ちゃん”か……。


確かにその通りだと思う。


正義感振りかざして、いい子ぶってあの子を助けた結果がこれなんだもんな。


自分でもバカだと今なら思う。


あたしが助けた女子……須藤美空(すどう みく)は、いじめられているあたしを、他のクラスメイトたち同様見て見ぬふりだ。


目は合う。でも逃げるように逸らされる。


“助けて欲しいなんて言ってない”
“ヒーローぶったりしたからこうなったのよ”


そんなことを言われているような気がした。