「そういうのはね、ケンカじゃなくて、単なるいじめっていうのよ!!!」
あたしがそう言うと、少年たちはバツが悪そうな顔で男の子から各々自分のランドセルを取ると、逃げるように走っていく。
「今度またやったら先生に言っちゃうからねー!」
その背中に叫ぶと、リーダーの少年は一度こちらを振り返り、「もうやんねぇよ」と捨て台詞を吐いて立ち去った。
まあ、あの感じだと、男の子をからかっていただけのつもりで、それがちょっと度を越しちゃったってだけっぽいな。
もうこんなことはやらないだろうけど、正直謝罪の一言ぐらいしてほしかったところだな。
まあ、助けられたからいっか。
「君、大丈夫?立てるかな」
呆然としているいじめられていた男の子に呼びかけると、その子はハッと我に返り、慌てて立ち上がる。
「た、助けてくれてありがとうございましたっ」
ぺこりと丁寧にお辞儀をするぐらいいい子だから、この子も理不尽な理由で絡まれていたんだろうなと思った。
「いっぱい怪我しちゃってるけど大丈夫?」
「はい。このくらいの傷、なんともないです」
「さすが男の子。強いんだね」
頭をポンポンと撫でてあげると、男の子は恥ずかしそうにしながらもはにかんで、もう一度あたしにお礼を言ってから軽い足取りで帰路についていった。