「うん、大丈夫。もう少し居るよ」
早めに帰ったらって言ってたくせに、碧もなんだかんだあたしと同じ気持ちだったんだ。
そう思うと嬉しくて、ついつい顔が綻んでしまう。
「じゃあ、やっぱりギリギリまでここにいようーっと」
両手と両足を伸ばし、大の字になって土手に寝そべる。
爽やかな心地良い風が頬を撫でていくのを感じながら、隣の碧を見ると……。
「……っ」
やっぱりどことなく寂しそうな目で遠くの方を眺めていた。
でも、碧の夕陽に照らされたその横顔は驚くほど綺麗で、あたしは思わず息を飲んだ。
「ん?どうしたの?」
蒼唯、とあたしの名前を呼びながら今度は憂いのない優しい笑みを浮かべる。
さっきまでの表情との違いにドキッと心臓が高鳴るのが自分でもよくわかった。
「な、なんでもないっ」
そう言って顔を背けた時、道の方で何やら騒がしい声が聞こえた。
「ほらー、とっとと歩けよー!」
「遅いんだよ!こんなペースで歩いてたら夜になっちゃうだろー!」
そんなあまり楽しそうじゃない声が道の方から聞こえた。
なんとなく嫌な予感がして、碧と顔を見合わせる。
碧もまさかと思っていたらしく、あたしを見て頷いたあと、声がするほうへ歩いて行った。