それからしばらく、いつものようにまた他愛もない話をしていると、あっという間に時間が経っていき、帰る時間まで1時間をきっていた。
「あ〜、もうこんな時間かぁ」
「蒼唯、今日も澤田先生来るんじゃない?今日は早めに帰って、先生ときちんとお話したら?」
碧に諭されるように言われる。
確かに、昨日も「明日も来ます」って言ってたから、今日も来てくれるとは思う。
いつもは先生がほとんど一方的に喋ってることが多いけど、あたしのほうからももっと近づいていかなきゃという碧が言うこともわかる。
でも、それよりも今は。
「……あたしは、もう少し碧と一緒に居たいんだけど」
ぽつりとつぶやくと、碧にも聞こえていたのか一瞬目を丸く見開いて、それから目尻を下げて微笑んだ。
「ありがとう、蒼唯。そんなふうに言ってもらえると嬉しいよ」
碧が本当に嬉しそうに笑うから、なんだか恥ずかしくなって顔が熱くなる。
「俺も、蒼唯とまだ一緒に居たい。もう少し、あともう少しだけでいいから……」
そう言って、碧は目を細めてなおも笑う。
でもその笑顔は、さっきまでの笑顔とは違って、どこか切なそうで寂しそうで。
口調も、あたしに強く懇願しているようなものだった。