「わかった。お腹すいてないなら仕方ないよね」


精一杯笑い返して、あたしはお弁当を再び自分のバッグに戻す。


「本当にありがとう、蒼唯。すごく嬉しいよ。
でも、それは蒼唯が自分で食べて。どうせ、俺の分しか考えてなくて、自分の分作ってないんでしょ?」


バッグのチャックを閉めようとした手がとまった。


「そ、そんなへましないし……」


思わず俯く。


耳まで真っ赤になっているところを見られたくなくて。


「嘘でしょ?もう、あおちゃんはおっちょこちょいなんだから」


くそう、何でわかっちゃうんだよ。
恥ずかしいじゃんか。



あたしは自分のことなんて忘れるほど、たぶん碧のことしか見えてないんだ。



「……今度また作るから、そん時は食べてよね」


私の言葉を聞いて、碧は一瞬切なそうに目を伏せたあと、すぐにいつもの笑顔を戻って頷いた。



「うん……ありがとう、蒼唯」



でも、次もきっと食べてはくれないと直感でそう思った。なんとなく。


出会いが突然だったりしたのもあって、碧はどこか浮世離れしているようなふうに見えてしまうことが多々ある。


きっと、あたしの手料理が食べられないことも何か理由があるような気がした。