その声に顔を上げると、碧はあたしを見てもう一度「大丈夫」と言ってくれた。
「蒼唯、君はひとりじゃないから」
そう言ってあたしの頭を撫でる碧。
温かい言葉に、優しいてのひら。
それらが心地よくて、“ひとりじゃないんだ”と素直に思えた。
「ありがとう、碧」
学校では誰も助けてくれる人なんていなくて、あたしは孤独な人間なんだと思ってた。
でも、今隣には碧がいる。
少し不思議なところがあるけど、あったかくて、優しい碧が、あたしの冷えた心に寄り添ってくれている。
これのどこがひとりぼっちだと言うのだろうか。
「碧に出会えてよかった……」
我ながら恥ずかしいぐらいにクサイ台詞だなと思うけど、自然とこぼれた言葉だった。
いじめられていなかったらこの川に来ることなんてなくて、碧に出会うこともなかったんだ。
そう考えると、いじめられてよかったのかな、なんて変なことを思ってしまうぐらい、碧と出会えたことが嬉しかった。
「俺も……。蒼唯と出会わせてくれた神様に心から感謝してます」
青空に向かって微笑みながら、碧がつぶやいたのが聞こえた。