「だって、あんなふうに聞いてくるなんて、最悪でしょ」


昨日のことを思い出してむすっとしながら言うと、碧がなだめるように頭を撫でてくる。
その感触に一瞬ドキッとした。


「あたしの気も知らないでさ……」


口を尖らせつぶやいたあたしに、碧は予想もしていなかった一言を返してきた。



「わかるわけないよ。だって、先生は蒼唯じゃないんだから」



「えっ……」


わかるわけないって……。



「デリケートな問題なのにっていう蒼唯の言葉もわかるけど、先生は蒼唯本人じゃないから、どれだけ蒼唯がつらかったかなんてわからないよ。わかるわけがない。考えることは出来るかもしれないけど、100%蒼唯の気持ちを知るなんてこと出来ないよ」


「碧……」


「だから、あえて蒼唯に聞いたんじゃないのかな。蒼唯にとってつらい質問だったとしても、蒼唯の気持ちを少しでもわかってあげるために」


そうか……それであんな……。
澤田先生が、碧の言った通りなことを思っていたのかはわからないけど、そうだったとしたらあたしが怒るのは筋違いかもしれない。先生は、あたしのつらさをわかろうと、歩み寄ろうとしてくれていたのかもしれないんだから。