蒼唯は、それから毎日学校へ行くようになった。
自分を裏切ったと思っていた美空ちゃんと友達になったばかりか、自分を苦しめ続けた清水さんたちと和解まで果たしたんだ。
俺が助言した時は、いじめていた人を助けるなんてことに躊躇していたけど、蒼唯はどこまでもまっすぐな子だから、俺がわざわざ背中を押さなくても自分からそうしていたと思う。
そう簡単にできないことを、できてしまうのが蒼唯。
俺は、そんな蒼唯を好きになった自分が誇らしかった。
この時の蒼唯は、小学生の時と変わらない明るさを取り戻してきていて、なおかつ昔よりもさらに一本筋の通った強さを持っていた。
もう大丈夫だろう。
4年越しの想いを伝える日は近い。
きっと、最後まで蒼唯は、俺のことを思い出すことはないだろう。
蒼唯にとっての俺は、“ここで死のうとしていた自分を助けてくれた現在不登校の男”だ。
でも、それでいい。
伝えられれば、それだけで……。
でも、全部が終わった日。
俺のおかげだとしきりに繰り返しながら、無邪気な笑顔を浮かべる蒼唯。
その笑顔が可愛くて、だからまだ少し離れ難いと思ってしまい、つい口からこんな言葉が出ていた。
「もう、俺がいなくても大丈夫だね」
別れみたいなことを言ってしまった。
「蒼唯、君は、ひとりじゃないから」
今まで何度も言ってきたのと同じだけど、俺の言い方はいつもとは少し違う。
今までの“ひとりじゃないから”は、“俺がいるよ”という意味だった。
でも今日のは“ひとりじゃないから、俺はもう逝くね”の意味のほう。
蒼唯は、何かしら俺の違和感に気づいたのか、その日を境にこの川に来なくなった……。