蒼唯が登校する日がやってきた。


今日はもうここには来ないだろうと思っていたけど、蒼唯は朝早くに俺の元へと来た。


蒼唯は、俺の手をおずおずと握ってきて。


こんなことしてくるようなタイプじゃないのに、蒼唯のほうからくるなんて。


心臓が早鐘を打つ。でも、それを蒼唯に悟られないように必死で平静を装う。


「碧の勇気、ちょっとだけ分けてね」


きゅっと小さな手で握られ、そんなことを言われてしまえば、愛しさが溢れ出して“好き”という言葉が喉まで出かかった。


それをすんでのところで飲み込んで、でもその代わりに体が彼女を求めてしまった。


俺に抱きしめられ、耳まで真っ赤になる蒼唯。
その姿が可愛くて、もっと早くこんな蒼唯を見ていたかったと思う。


「ちょっとじゃなくて、全部持ってっていいから」


俺はそんな強い人間じゃないから、俺の中にある“勇気”なんて、きっとたかが知れてる。


でも、わずかな俺の勇気でも、君のためになるなら喜んであげるから。


温かい蒼唯の小さな体。
正体がばれたら、きっとこの体に触れることはできなくなる。
幽霊になって初めて蒼唯に会った時みたいに、きっとすり抜けてしまうだろう。


でも、俺は蒼唯を好きになった自分を結構気に入ってるから、もう迷わない。


だから、頑張って、蒼唯。


俺に、君が好きだと言わせてくれ。