「ごめんね、蒼唯」
突然お母さんがあたしに謝ってきた。
何に対してのごめんねなのかわからない。
首を傾げると、お母さんは優しく笑う。
「お母さんね、今まで蒼唯の為と思って学校行きなさいって言ってたけど、正直蒼唯が学校でどんな目に遭ってるか想像もできなかったの。ごめんね、つらい思いさせてたね」
お母さん……。
笑っているけど、泣きそうにも見えるお母さん。
そんなことわざわざ言ってくれなくてもわかってた。あたしのことを思って、1日でも休んでしまえばさらに学校に行きにくくなるだけだから。
確かに、正直キツいこと言わないでと思ったこともあるけど、普通親だったら、そうやって子供の背中を押すものだと思ってた。
だから、こんなふうに謝ってくれるなんて思ってなくて、突然のことにただただ目を丸くしてしまう。
「今までよく頑張ったね、あおちゃん」
そう言ってお母さんに優しい笑顔を向けられた瞬間、気が緩んだのか一気に涙が溢れてきた。
「お疲れ様。もういいよ、ゆっくりしなさい」
「うんっ……。ありがとう、お母さん……!」
お母さんがにこっと笑って自分のケーキを一口食べた。
それを見て、あたしもケーキを口いっぱいに頬張る。
甘いはずのチョコレートケーキが、涙のせいで少ししょっぱく感じた。