「……ごめん、蒼唯。ほんとにごめんね」
食べたい。今すぐにでも残さず食べたい。
だって、大好きな女の子の作った手作り弁当だよ?いらない男がいるわけがない。
でも俺は、幽霊だから。
どんなに食べたくても、食べられない。
そして、そのことを蒼唯に知られるわけにもいかない。
だから、明らかに作り笑いを浮かべている蒼唯に気づかないふりをして、心の中で何百回も「ごめん」と告げた。
どうして、俺は死んでしまったのだろう。
いや、死ぬ間際は蒼唯を助けられた幸せでいっぱいで、そんなこと思っていなかった。
それなのに、未練のせいでこの世に留まり、こうやってまた蒼唯に巡り逢ってしまったから。
もっと、たくさん蒼唯に触れたい。
これからも、そばにいたい。
そんな欲が込み上げてしまう。
寂しそうな蒼唯を見ると余計に、そんなことを考えてしまって、いろんなことがどうでもよくなって、全部忘れてこの腕に蒼唯を閉じ込めてしまいたくなった。
好きなのに、こんなにも好きなのに、ずっとそばにいることは叶わなくて。
そればかりか、この気持ちを伝えたら、俺は消えてしまう。
俺はいつの間にか、蒼唯の問題が解決するまでは告白しないという自分の誓いに逆に甘えて。
悩む蒼唯に助言をしながらも、このまま蒼唯が学校へ行かなければいいのに、いじめがなくならければいいのに、そしたらずっと俺は蒼唯の隣にいられる、そんな最低なことを考えるようになっていった。