俺はまず、蒼唯に学校をしばらく休むことを提案した。


もちろん、蒼唯が疲れきっていたっていうのも理由のひとつだけど、大部分は蒼唯とまたしばらく一緒にいたかったっていうのが実はほとんど。蒼唯には申し訳ないんだけど、蒼唯と久しぶりに過ごす時間も大切にしたくて。


それでも蒼唯は、少し微笑みながら言ってくれた。


「碧、ありがとう」


思わず、きょとんとしてしまった俺に、蒼唯は、


「碧のおかげで、ちゃんとお母さんと話せたの 。だから、ありがとう」


そう言ったんだ。


俺は嬉しかった。


かつて、蒼唯にそうしてもらったように、今度は俺がいじめに苦しむ蒼唯を助けたいと思っていたから。そのために俺は、今ここに存在しているから。


役に立てたんだ。そう思うと本当に嬉しくて自分でもわかるぐらい顔が綻んでしまった。


よし、この調子で……。
と思ったのもつかの間。


意外にも蒼唯は、俺の事を探るような質問ばかりしてくるから、返答に困ってしまった。


正体を知られるわけにはいかない。


でも、蒼唯を騙すみたいで心苦しくて、 「助けてもらったのと、いつもお世話になって るお礼です!」と言って、わざわざ持ってきてくれた手作り弁当を返す時は泣きたくなるぐらいだった。