……目が覚めると、僕はあの川にいた。


あおちゃんと初めて会った、あおちゃんと過ごした、あおちゃんと別れた、あの川に。


わけがわからず、しばらく目をぱちくりさせる。


だって、僕は確かにあの日、この川底に沈んで……。


もしかして、奇跡的に助かったとか?


そう思ったけど、橋のところにたむけられた花束を見て、そんな希望も消える。


きっと、母さんや近所の人達が、わざわざここに花やらお供え物やらを持ってきてくれたんだろう。


【碧くんへ】と記されたお供え物を見て、ぎゅっと胸がしめつけられるような感覚がした。


何で、僕はこんなところにいるんだろう。
ここは死後の世界なんかじゃない。


どうして、この世に留まってしまったんだ。


考えて、思い当たるのは死ぬ間際に強く思ってしまったこと。



あおちゃんに、好きだと伝えられなかった……。



もしかして、未練というやつなのだろうか。
だとすれば、これからどうしたらいいんだろう。


もし、ここが、あおちゃんたちのいる“この世”だったら、僕は“この世”に未練を残したせいで成仏できない幽霊ということだ。
仮に未練をなくすためにあおちゃんに告白するとして、幽霊になってしまった今、どうやって告白すればいいというのか。